2013年3月31日日曜日

El Celler de Can Roca 訪問記


前回の記事で私のマスターシェフへの情熱をタラタラと書きましたが、
熱心に視聴を続けた結果、この度、番組内で取り上げられた、
2011年度サンペレグリノ世界レストランランキング第2位 、
ミシュラン3つ星 El Celler de Can Roca へランチに赴くこととなりました。 


ハーフマラソンのために滞在したバルセロナから電車で約一時間強、
ジローナという街にそのレストランはあります。
ランチの予約は午後1時でしたが、遅刻しちゃいかんと思い、
11時半にはジローナ駅着。
駅からお店まではバスやタクシーで行くのが一般的なようでしたが、
お腹を空かせる目的で、我々は歩いて向かいました。
住宅地を抜け、交通量の多い大通り沿いに歩いて20分程度。
お店まで歩いている段階で既に緊張している小市民。

到着したのは12時15分頃で、当然早すぎたわけですが、無問題。
お店の敷地内に脚を踏み入れ、早速中庭でロカブラザーズ次男(ソムリエ)と三男(ペイストリーシェフ)を発見!
常連客か関係者と思われる人たちと歓談していました。
テレビと同じ姿!テンション上がります。
ちなみに、姿の見えなかった長男がお料理の総監督。


中庭のベンチに腰掛けて勝手に待たせてもらっていると、
歓談を終えたソムリエ次男が声を掛けてくれました。
英語は上手なはずながら、スペイン語。
今回のスペイン滞在でスペイン語を話した数少ない機会が、このソムリエとの会話!
ああ、スペイン語勉強していて良かった〜!と安直に歓喜。

待つ間にカヴァを勧められたものの、空きっ腹にカヴァ入れてこの後の食事が台無しになることを懸念し、お水をいただきました。

お天気にも恵まれ、手入れの行き届いた中庭の緑とガラス越しの店内が、
何とも言えない優雅な雰囲気を醸し出し、一層心高まります。

時間になると給仕係がやって来て、中に通してもらいました。
恐らく(間違いなく)全席予約済みで、各テーブルがそれぞれの客を待ち受けるべく、しっかりとスタンバイされています。

着席すると、早速カヴァのサービス。
ランチのコースは135ユーロと165ユーロの2種。
165ユーロはメニューも長く、ものすごい量に思えましたが、
せっかく来たからということで、お高い方を選びました。
ちなみに、テーブル全員が同じコースを選ばなくてはなりません。

我々は、予約時からナッツのアレルギーを伝えてあったため、
一部のお料理は差し替えを手配してくれていいたようです。


電話帳のような分厚いワインリストが数冊用意されていましたが、
我々ワインに明るくない素人には賢明な選択は不能と思われます。
お店の人の勧めもあって、コースの料理それぞれに合うワインが出てくる、
マッチング、いわゆるワインのコースをいただくことにしました。
ただ、皿数が10以上あるので、「全部は飲みきれないよ...」と懸念を口にすると、
マッチングワイン1人分を2人でシェアして飲んでもOKと言われました。
これは嬉しい。ということで、一人分85ユーロをシェアする事に。
ただし、それぞれのワインを2つのグラスに分けて注いではくれないので、
シェアの場合はいわゆるまわし飲みになります。
我々は一人がまず半分くらい飲み、二人目が残りを飲むという方式にしました。


こちらはコース突入前のカヴァ。
ああ、写真を見て記憶が甦るだけで心躍ります。
ここから先は、ウダウダと書くよりも、写真でお楽しみください。


一杯目のカヴァと共に間もなく運ばれてきたのは、「世界」と名のついたこちら。
一口大の宝石のようなかわいらしいそれぞれが、世界5各国のスパイスを用いて創出されており、「食べながらどこの国か当ててみて」との課題付きでサーヴされました。
ちなみに、奥のオレンジのが日本。味噌風味でした。


続いてやってきたのは...


盆栽。
にぶら下がった、キャラメライズドオリーブ。


キャラメルコートされ甘いのですが、巻いてあるアンチョビからにじみ出る塩気とのコントラストが絶妙です。
いや、この演出はカンロカらしい。
この後の皿のプレゼンテーションも、随所に和のテイストが窺えます。

続いて以下の3品が同時に登場。

グレープフルーツとごまの風味のジュースが詰まったボンボン。
見た目チョコレートです。噛む瞬間、わくわくします。

アーティチョークオムレツ。
大きな白い皿に謙虚しかし確かな存在感を示すこの一口。
まろやか、でもアーティチョークの味しっかり。

えびせん。無類のえびせん好きの私には嬉しい。
でもこの網状のベースは柔らかく繊細で、優しく持たないと崩れてしまいます。



続いてやってきたのは、トリュフ兄弟。


岩の中から出てきたのは...


ブラックチョコレートトリュフ。
演出もにくい。

トリュフブリオシュ。
見た目の通り、要はトリュフ饅頭。もちもち皮の中に、濃厚トリュフクリーム。
うむむ、期待通り、カンロカやるな... この辺でもう既にそう思わせてくれます。


ここまでが、カヴァをお供にサーヴされたアミューズブーシュと認識しております。
既にお腹は十分満足しているとも思えるのですが...。

いよいよ、マッチングワイン付きの本ラウンドに突入です。

まずはパン。かごで何種類か持ってきてくれる中から選びました。
Traditional と称されるシンプルなのと、トマトのブリオシュにしました。

以下、長くなるのでマッチングワインは割愛し、お料理のみを紹介します。
それぞれのお料理と共にどんなワインを飲んだかどうしても知りたい!
という方は、当方までお問い合わせください。

ベジタブルブロス、グリーンピース、オレンジのはマンゴー、赤いのはウニ、洋梨のダイスも入っています。


味付けは素朴ながら、プレゼンは春色が鮮やか。
ピーのしっかりとした歯ごたえが生きています。
巷のグリーンピースがピーの味と思っている庶民には衝撃です。

オリーブづくし。
オリーブのガスパチョ、ムース、フリッター、オリーブアイスクリーム、オリーブオイル付きトーストなどが一皿にまとまっています。

これでもか!という程、オリーブてんこ盛りの一皿ですが、
パーツによってしっかり風味が異なるので、さすが飽きさせません。


ホワイトアスパラガスのヴィエネッタ。
まさにあのアイスのヴィエネッタ。チョコレートの代わりはトリュフ。

そこはかとない甘みはしっかりホワイトアスパラ。
この発想とプレゼンテーションは、まさにカンロカの真髄。
こんなに「美しい」ものを食べたことがない。
この一品で完全にKOされました。

えび一尾。みそのジュースにさざ波を模した泡、プランクトンのケーキ。


これってもう完全に懐石の世界では。
日本人はその奥ゆかしさを感受する一皿だが、外国人にはまったく違う印象の料理に映るのだろうか?

続いて、オイスター。ジビエのオランデーゼソース。
お皿もこのために用意されたのか、本当に牡蠣を食べるよう。


ソースというよりクリームは濃厚で、味わい深いです。
上にかかっているのはまたしてもトリュフ。

マッチングワインももったりと深い、特に合う逸品でした。




シーブリームにエンダイブとシトラス。




黒いお皿に魚の白、鮮やかな黄色と赤のシトラスソース。
これまたプレゼンテーションが光ります。
前のジビエのまろやかさと対照的な、さわやかなキック。


次。イベリコ豚!
リースリングベースの柑橘系ソースです。


まるで北京ダックのようなポーション。
ゼリー状のマンゴー、メロン、赤かぶが、豚の脂身を中和する役割を果たしています。
これは率直に美味しい。食べながら、笑いが止まりませんでした。
最後にお皿の上にある赤い花びらのようなものでお口直しを、
とお店の方からのアドヴァイスがありました。確かにさっぱり。




赤ボラのポーチ。





このお料理は2011年のマスターシェフに出てきましたが、
当時は黄色(サフラン)のみだったニョッキが3色になっていたりと、進化を遂げているようです。
お魚だけど赤ワイン。ソースによく合います。


続いて、霧に覆われるようにやってきたのは...


トリュフのスフレ。


もはや説明の必要もないでしょうが...
トリュフのスフレです。中は濃厚ムース上のトリュフ。
そしてそれを取り囲むのが、歯ごたえたっぷりの肉厚トリュフのスライス。
トリュフって、こんなに大量摂取して良いものなんでしょうか...。


もはや贅沢に身体がついてゆけなくなりつつあるここで一端化粧室休憩。
ワインもだいぶいただいているので、自分の足取りを確認するように、
周囲のテーブルを見渡しながら、ゆっくり歩いてみる。
お一人様のお客さんもいれば、若い男性ばかりの4人組も。
さらに日本語の関西弁が聞こえるテーブルを素通り。

化粧室は一部屋のみ、レストランの雰囲気にしては、質素で簡易的なものでした。
シンプルで良いっちゃ良い。そして、全館通してバリアフリーです。


席に戻って間もなく出てきたのがこちらの逸品(一品)。
ラムのグリルと、sweatbreads (シビレ:調べると膵臓やら胸腺やらに当たるらしい)、ナス。


この、ナスの上に乗っている赤いものが、sweetbreads なんだそうです。
初めて食べました。モチっとした食感で、後を引く美味しさです。
もう一個欲しい!


そして、いよいよメインのメインイベント突入。
出てきたのはこちら!
 
トリュフ。またトリュフです。おーまいが。
トリュフのリゾット。

見よこの色つや。
実はこれ、ナッツアレルギー対応の特別メニュー。
通常メニューでは鳩のお料理が来るはずだったようですが、むしろハッピー↑です。
とにもかくにも、トリュフ。米に絡まるトリュフ、ジュース、
そして散りばめられたスライストリュフ。
もう一体どうして良いものか。
この数時間で、一生分に値するトリュフを摂取したことうけあい。


メインのお料理コースはこれにて終了。
いよいよお楽しみのペイストリーシェフ三男によるデザートに突入です。


一品目はアイスクリーム。バルサミコ酢が効いており、中にはライチの果肉。
お口直しにふさわしいさわやかさ。



デザート2品目は、リンゴ。

ではなく、これは飴細工です。
ふわふわの綿菓子に乗って。
見た目にも美しくおいしい。このプレゼンも、カンロカを象徴するスタイルです。

中から出てくるリンゴクリーム。
外のキャラメルリンゴがかなり甘いので、中のクリームはあっさり。


少し時間が空いて、運ばれてきたオーラスのデザート。
きたーー!!


私の大大大好物のドルセデレチェ(ミルクを煮詰めた甘いキャラメル)にヤギミルクのクリームたっぷり、甘さとのコントラストにグァヴァが添えられています。

波打つお皿は、表面をスプーンを滑らすと、カウベルの音を奏でます。
視覚、聴覚、味覚に訴えるトリプルパンチ。

これは、2011年のマスターシェフで出て来た一皿で、是非食べたかったもの。
135ユーロのコースにあるのをメニューで見ましたが、
165ユーロのコースには入っていませんでした。
しかし、165ユーロのコースの最後のデザートがナッツ入りだったようで、
幸運にも差し替えられてこれが登場するという嬉しい大団円!

あ〜、幸せ!!

お料理はもちろん素晴らしかったのですが、それと同じくらい if not more、感動させられたのがワイン。
ソムリエ次男セレクトのマッチングワインは大正解でした。
何がすごいって、ワインが本当にシームレスにお料理とマッチする。
過去にもマッチングワインと共にお料理をいただいたことはありましたが、
「うん、まあ合うっちゃ合うね」という程度の感想しか持てないでいたワイン素人。
ここのは、ワインに詳しくない我々も確実に「ワインと料理が融合・一体化している」と認識できます。
食事の終盤にソムリエ次男がテーブルを訪ねてきてくれたので、
ワインに心底感動しきった旨をアピールしました。
繰り返しになりますが、それぞれのお料理と共にどんなワインを飲んだのかどうしても知りたい!という方は、当方までお問い合わせください。


デザートの後、とどめにプティフールのワゴンがやって来ました。
既に舌もお腹も脳も大満足しきっていましたが、せっかくなので何品か選択。
コーヒーもいただきました。



会計時、今日食べた全てのお料理とワインのリストをいただきました。
良いお土産になりました。今もそれを見ながら記事書いています。
ちなみに、プティフールも食べきれず、お土産にしました。


1時前から食べ始めて、お店を出たのは夕方5時を刻もうという頃。
まだまだ陽が高い道を、また歩いて駅まで戻りました。



ハーフマラソン完走の素晴らしい報酬になりました。
至福のひとときを終えた帰り道は、20代の頃、とにかく当てもなくお金を貯めようと、サラリーマンとバイトを掛け持ちして休みなく働き、電車代を惜しんで歩いたり、少しでも安く買うためにスーパーを何軒もはしごしたり(今もやるけど)していた自分を思い返し、今日一食にこれだけの投資ができたことに「自分も随分良いお金の遣い方ができるようになったな」としみじみ考え、感慨深いものがありました。

またカンロカに食べに行きたい。
その一方、この素晴らしい思い出を最後にやめておいた方が良いのか?
正直迷うところです。
もし再訪して、「前の方が良かった」と失望したりすることは避けたいので...。
こんなお店に限って、そんなことはないと信じたいけどね。

しかし、バルセロナの記憶は、すっかりこのカンロカ experience に持って行かれ、
振り返れば、マラソン?ああ、走ったねそういえば...。




ブログランキング・にほんブログ村へ

0 件のコメント:

コメントを投稿