2012年3月11日日曜日

入社一週目に転職活動


8月中旬、締切の一週間前に修士論文を提出し、母を連れて3週間、地中海クルーズ旅行に出た。表向きには『日本へ帰国』という理由でロンドンを空けたため、日焼け対策に余念がなかった。

楽しい地中海からロンドンに戻って間もなく、9月半ばの月曜日に、この会社(B社とする)に入社した。この時点で実はまだこの会社への不安はおおいに残っていた。それもこれも、第一印象が最悪だったことに起因する(前の記事参照)。事前に送ってもらった契約書も、その不安を煽る材料となった。契約書には、これまで勤めた会社のそれに見られたような、労災、情報の取り扱いなどの記載はほどんどなく、代わりに目につくのは、「ランチは12時から14時の間に食べる」とか、「病欠の場合は朝10時迄に連絡する」とか「業務中にヘッドフォンで音楽を聴いてはいけない」とか、なんというかしごくマイクロマネジメント的な内容が目につく。加えて、狭くて洗練されていないオフィス、個性の強い社長、なんだかよどんだ空気... 考えると果たしてどれだけその環境で仕事を続けて行けるか不安になる(始まってもいないのに)。

入社3日前の金曜日、家でネットをいじっていると、LinkedIn の右側のバーに、「あなたが興味のありそうな求人」みたいな感じで、「日本語データアナリスト in ロンドン」というのが出てきた。詳細を見ると、業界こそ違えど、どうも私が以前日本でやっていた仕事に限りなく近い。求人を出している会社(C社とする)を調べると、どうやら米系大手のちゃんとした所のようだ。これから入る会社をすぐ辞めたりクビになったりした場合の保険と思って、早速CVを送ってみる。すると、ものの数時間で人事担当者からメールがあり、週明け月曜、つまりB社への入社日当日に、C社の電話インタビューをすることになった。

C社の人事担当はオランダにおり、電話で40分程話し、会社概要、仕事内容や志望動機やら一般的な面接トークをした。 話せば話す程、自分の経歴がC社の募集しているポジションにぴったりに思えた。人事担当も同じように感じたらしく、その日のうちにC社ロンドンオフィスでの面接のアレンジに移った。

C社のロンドンオフィスは、シティのちょっと外れ、LSEからもそう遠くなかった。人事担当と話をした数日後、定時きっかりにB社を退社し、あわててC社へ向かって5時半から面接を受けた。ボスの女性と同僚になる男性社員2名が現れ、まずは「自分の経歴を、この仕事の内容とマッチングさせながら説明してください」というリクエストがあった。ジョブスペックは熟読してきているし、自分の経歴もドンピシャだったので、これは簡単にクリアした。その後は、面接でよくある「○○な場面に遭遇した時の経験談、対処法」といった質問が続いた。その後、PCを使って製品やツールを見ながら、業務内容を細かく説明してくれた。途中、こちらから質問をしたり、会話もテンポよく進んだ。面接官の感じも良く、格段難しい内容の質問もなく、面接は1時間強で滞りなく終了。結果は数日以内に連絡があり、アメリカのオフィスと最終面接があるかも、と伝えられた。

翌日には人事から連絡があり、最終面接の案内があった。ロンドンオフィスの面接での私のパフォーマンスが非常に良かったと何度も強調された。約3日後の夕方、アメリカにいる大ボスとの電話面接が設定された。当日はそさくさと帰宅し、机の上に自分のCVとジョブスペック、質問事項を書いた紙を広げ、電話を待った。時間になって電話してきたのは、NYにいる女性の大ボスだった。先方も私のCVを読んでいる上、先日のロンドンの面接の様子も伝わっているからか、こちらから自分の説明は全くなく、いきなり「何か質問は?」と聞かれた。3問くらいこちらから、ロンドンオフィスで尋ねたのと似たような質問をし、回答があって、15分程で通話終了。なんともまああっという間の面接だったが、感触はすこぶる良かった。

翌日の朝一番で人事から電話があり、仕事のオファーがあった。嬉しい、がそれよりも、「やっぱりね」という気持ちのほうが大きかった。だって、私の経歴とこの仕事のスペックが本当にドンピシャだったから。むしろ、落ちていたらかなりショックだっただろう。給与も今のB社より高く、B社よりも格段きれいなオフィス、 そして大企業なので、マイクロマネジメントの窮屈さもないだろう。

しかし、結果的に私はC社のオファーをお断わりした。この頃迄に3週目に入っていたB社の仕事がまんざら悪くもなく、楽しんでこそいないものの、新人ながら責任ある仕事もまわしてもらっていて、すぐに辞める理由も特になかった。そして、C社での仕事内容が、前職にあまりにも似ていた(だから受かったんだろうが)。そのため、新しいスキルや経験を手に入れるチャンスに乏しい気がした。最大の決定打は、もしC社に入っても、そう遠くない将来にきっと理想のCanary Wharf に仕事を見つけて転職してしまうだろう、という根拠のない自信と希望的観測だった。どうせ数ヶ月で辞めることになるなら、このままB社にいて直に転職するほうが、履歴書の傷も少なく済むだろう。

C社のオファーに悪い点は全くなかった。無職だったら喜んで受けていただろう。が、上記のような、特に3つ目の、今思えば全く異常なまでの楽観的な見通しから、魅力的なC社を蹴ってB社に潜伏する道を選んだ。C社にはお詫びに友人を紹介し、結局この友人がめでたくC社のポジションに収まった。

B社入社1週目の転職活動はこうして幕。以降、ぶーぶー言いながらもあがかず大人しく勤務しながら時期が来る(=Canary Wharf の求人)のを待っていた。


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