2011年4月12日火曜日

インド旅行記 ②



7時間のドライブ
一夜明けた。ホテルの朝食は基本インド料理中心だった。日頃朝からカレーを食べる事に抵抗はないが、インドカレーとなると勝手が違うのでパス。フルーツ等もあったが、確実に火が通ったものを求め、目の前で焼いてくれるオムレツを食べた。
コーヒーを頼むと、有無を言わさずミルクと砂糖たっぷりの甘ったるいカフェオレが出て来た。実際にはホットミルクにネスカフェの粉末を溶かし、さらに砂糖を投入しているのではないかと思われる。インドではコーヒー=これのようだ。ブラックコーヒーは、Black coffee, no milk, no sugar と強調しないと出て来ないということが3日目くらいにわかった。
Bhubaneswar から我々の最終目的地である Sonepur という町にある病院までは、車で7時間程度と聞いていた。年のために前日、ホテルと同じ通りにある薬局で酔い止め薬を買った。二錠で6ルピー(15円くらいか?)だった。朝8時半に病院を運営する団体の車が我々を拾いにやって来た。通勤の車、バイク、人間が溢れるバスを横目に高速道路のような道を少し走り、昨日ミーティングしたMを拾って車内は運転手含め5人になった。
さらに少し走ると、休憩を兼ねてMが自宅に我々を招いてくれた。Mの家は門や庭こそないが、石造りで、車窓から見えた家々と比べてかなり大きく思われた。三世代同居のようで、部屋数もかなりあった。どの部屋にもドアはない。
広めの廊下のような空間に通され、椅子を用意されて座った。間もなくMの次男(大学生)がお茶とお菓子を持ってやって来た。お茶は例の甘いコーヒー。お菓子は自家製のようで、チーズケーキのように形が整ったライスプディングのように見受けられた。材料がわからないので手を付けたくなかったが、それも失礼かと思い、二切れのうち一つの隅っこ5ミリくらいを削って口元まで持って行った。さらに思い切って口にも入れてみた。カシューは入っていない様子だが、いずれにしてもスパイスが口に合わず、結局それ以上は手を付けられなかった。『アレルギーがあるので』と言い訳したが、少々罪悪感。
他のインド人に違わず、Mの次男もまた人懐っこいというか、お菓子を持って来たまま去ろうとせずにその場に残り、訛りのキツい英語で我々女子3人と会話を楽しんでいた。(私はこのお菓子との攻防で会話を楽しむ余裕はなかったが)
休憩後は長いドライブに入った。道中、何もない道を通ってはちょっとした繁華街(200メートルあるかないかといった規模だが)を通り向けた。これがいわゆる地方の村々の中心地なのか。驚いたのは、こうした村の商店街の各所に TATA DoCoMo という看板を見つけたことだ。TATA はインドのいわゆるなんでも商社であるという認識があったが、DoCoMo はあの日本のNTTドコモ?インドで携帯サービスを提供しているなんて知らないが、TATA と提携しているのか。(後で調べたらやはり日本のドコモが加担しているようだった)
途中、両側は草むらしかないような道路の脇のブッシュでトイレ休憩を経て、夕方4時前にようやく目的地の病院に到着した。想像していた通り、何もない所に突如作られた病院といった印象だ。
我々が車から降りると、日曜の午後にも関わらず病院スタッフが総出で迎えてくれた。手作りの花束と共に。
病院は3階建てで、最上階のゲストルームにフィンランド人のTと私、一階の本来患者用の個室に L が泊ることになっていた。我々の部屋にはベッドが2つ、天井にファンがあり、バスルームに洗面台とトイレとシャワー、ではなく、トイレはあるがシャワーはなかった。代わりに普通の水道の蛇口が壁に付いており、床には大きなバケツと小さなバケツが1つずつ。前夜ホテルのシャワーで見かけたものと同じセットだった。大きなバケツに水を貯め、小さなバケツでくみ出して水浴びをするということか、とようやく察しがついた。
間もなく遅いランチが用意された。病院には事前に私のカシューアレルギーは伝えられていたようで、心配無用と言われたが、やはり心配だった。出て来た料理はやはりカレーが3〜4種類。カレーはもとより、まずは食器の衛生面がまず心配だった。生水を飲むなと言われているのに、これらの食器類は生水で洗われており、水滴が付いている。どうやって生水を回避できようか。ミネラルウォーターが用意されていたが、このコップで飲んでは意味がないではないか。水に関しては、ロンドンから持って来たエビアンの空ボトルから飲む事に決めた。(自分ひとりだけコップを使わないという行為をさりげなくやるのに時に苦労した)
とは言っても、お皿を使わず食事はできないので、ここはもう潔く目を瞑ることにした。
インド人は、噂通り手で食事をしていた。我々が外国人だからか、スプーンとフォークも用意してくれた。インドに数ヶ月暮らしているL は慣れているのか、問題なく手でカレーを食べていた。T も以前にインドをバックパッカー旅行した経験も手伝ってか、抵抗なく手でカレーを食べている。液状のカレーとご飯を手で混ぜそれを口に運ぶという行為が私はどうにも受入れ難く、迷わずスプーンを使った。テーブルの下でこっそりナプキンでスプーンを拭きまくった。
全種類のカレーを口にしてみた。食べられそうだったが、一言で言って、正直どれも口に合わなかった。生野菜は最初から無視した。ドライブの疲れもあり、ご飯だけ半分くらい食べ、残りはほとんど残してしまった。
その後は病院を一周して施設を見たり、スタッフとミーティングをしたりして夜まで過ごした。時差ボケもあってか、とにかく眠くて眠くて仕方がなかった。インド人全般の夕飯の時間が遅いのか、ディナーに呼ばれたのはもう10時をまわるころだった。昼と同じようなカレーが若干バリエーションを変えて登場した。お腹が空いていたので、昼間よりはしっかり口にした。
夜になると頻繁に電気のパワーダウンがあった。その度に部屋の天井のファンも止まってしまう。30度以上ある室内で、真っ暗闇の中、そよ風も拭いて来ない部屋で、虫が飛ぶ音に怯えながら眠りにつくのは容易ではなかった。ロンドンから持って来たマイシーツにくるまって、ひたすら時間が経つのを待った。
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